発達障がいを考える 「偏食には原因があります」
「食べ物の好み」は誰にでもありますが、発達障がいの多くの方には「偏食」が見られます。
発達障がいが疑われる特性の一つとして、著しく制限された興味というものがあります。この興味のあるものにしか関心を示さない、という状態が「食べる」ということにも表れているのです。 ・特定のものしか食べない。
・特定のものを異常に嫌う。
・匂いを嗅かいでから食べるかどうかを判断する。
・大量に水分を摂りたがる。
そうした点が共通しています。
辰也君(仮名・十一歳)に初めてお目にかかったのは、年長さんの五歳の頃でした。多動で独り言が多いお子さんだったことを記憶しています。お母様は辰也君の子育てに疲れ切っていました。
辰也君もひどい偏食で、肉、牛乳、パンや麺類以外はほとんど食べたがらない。お母様は辰也君の栄養状態を大変気にされていて、少しでも野菜を食べてくれたら、と細かく野菜をすり潰したり刻んだり、カレー、ハンバーグ、チャーハン等、さまざまにレシピを考えて調理をしているのに、野菜に気付くと、全く食べてくれないとのことでした。
皆さんは、ミネラル不足が味覚障害と関係があることをご存知でしょうか? 特に亜鉛不足が味覚障害を引き起こします。毛髪ミネラル検査を行うと、発達障がいの方は優位に亜鉛不足が見られるというデータがあります。また、精神疾患の方も同様です。極端な偏食により栄養状態が悪くなることで、味覚そのものがおかしくなるということは、偏食はミネラル不足から起こっている場合が少なくないのです。
私が辰也君に最初に行った指導は、ミネラル不足の解消をはじめとした食生活の改善です。私はこれまで千件を超える遅発性食物過敏検査を見てきましたが、九割を超える方に「小麦と乳製品」の食物過敏があることが分かっています。辰也君にもその可能性があると考え、この二つの食材を徹底的に除去していただくことを提案しました。お母様は「それでは食べるものがなくなってしまう」と悲鳴を上げられましたが、お子様の改善を希望するならば、ご両親にも決意が必要であることを説明し、まずは、毎日飲んでいる牛乳を買うのを止めていただくことにしたのです。牛乳だけではなく、ヨーグルトやチーズなどもご家族で食べることを止めていただきました。辰也君は毎日飲んでいた牛乳が冷蔵庫に入っていないことで、最初はパニック状態になりましたが、数日するとパニックが収まってきました。
次にパンや麺を止めていただきました。辰也君は、大さじ一杯ほどのご飯を海苔で包んだ、一口おにぎりのようなものであれば食べることができたので、お母様にはこの小さなおにぎりをいくつも作っていただきました。ご飯は少量の天然塩で味付けをしたものです。併せて、天然出汁からとった味噌汁も必ず出していたきました。海苔も出汁もミネラルが豊富ですから、ミネラル不足改善につながる食材です。
食生活を変えて一カ月を過ぎた頃でしょうか。辰也君は夕食に出されていたブロッコリーを突然口にしたのです。見ていた家族は全員「エッ!!」と驚いたそうです。そして、みんな揃って手を叩き辰也君を褒めたのです。そこから偏食は劇的に改善していき、今では、何でも好き嫌いなく食べられるようになっています。もちろん、今や発達には全く問題ない状態になりました。あれ以来、乳製品と小麦製品の摂取は控えているそうです。なぜなら、辰也君が乳製品や小麦を食すると体調を崩すからということでした。
偏食は感覚過敏が原因であることも少なくありません。味ではなく、噛むのに大きな食材、固い食材などは口に入れると異物と認識してしまうため、食べられないという事例もあります。その際には、食材を擦ったり細かく刻むことで解決することもあります。
感情的に対応しても、決して良い結果が生まれることはないのです。